有島武郎《或る女》における孤独美20

《有島武郎《或る女》における孤独美20》由会员上传分享，免费在线阅读，更多相关内容在学术论文-天天文库。

1、有島武郎《或る女》における孤独美はじめに有島武郎は白樺派の代表的作家で、白樺派の四大支柱の一人（ほかの三人は武者小路実篤、志賀直哉、長与善郎）だと言われる。彼は同じ「白樺」派の有島生馬（壬生馬）と里見弴の実兄で、文学史においては「有島三兄弟」といわれている。文学的生涯はわずか七年足らずで終わったが、生前、一代の人気作家に数えられた。彼は人道主義を実行で証明しようとした作家で、文学作品は題材範囲が広く、頗る研究価値を有する。本研究は有島の作品『或る女』における孤独美について研究し、有島の内面を解読し、その創作特徴を分析してみたい。有島とその作品に関する研究は非常に多く、豊かな成果を収め

2、た。評論家安川定男は『有島武郎の研究』の中で「人格仮面」という概念を用いて、有島武郎における表層意識と無意識との矛盾を分析している。また符夏鷺の『有島武郎の「或る女」論』においては、運命と抗争する「葉子」の精神について分析した。有島武郎と『或る女』に関する研究は多いようであるが、孤独美という視点からの研究はまだ少ないようである。「作者が葉子と化かして自分の内心不満を表す」とか、「葉子は極めて独立の象徴である」とか、「『或る女』は有島の文学創作に巨大な影響を与えた」とかという考えを持っている先行研究があるが、しかし、大部分の人は『或る女』に対する研究を二言三言のレベルに止まり、より多く

3、の精力を彼の名作『宣言』、『生まれ出づる悩み』、『かんかん虫』『卑怯者』などに用いられた。勿論、一部分の人が『或る女』に対する専門的な研究を行った。先行研究によれば、「葉子は作者自身の象徴であり、作者が葉子を通じて自分の内心世界と当時の社会に対する不満」などの研究結果を収めたが、しかし、『或る女』を有島の作品における孤独の世界に置いて、孤独美を分析する人は少ない。『或る女』の主人公葉子は医学博士の娘で、新しい教育を受けた才色兼備の女性である。彼女はあらゆる既成の道徳や社会の束縛を蹴飛ばして、勇敢に自分を生かそうとすう女性である。彼女、三人の男との恋愛は失敗に11終わった。葉子は最後に

4、｢間違っていた。(中略)この世の中を歩いてくるんじゃなかった。しかし、誰の罪だ。分からない。｣と考えて死んでしまった。彼女の形象から彼の孤独さと悲しみが読み取れるだろう。『或る女』が武郎の代表作であるばかりでなく、日本の近代文学としても一つの記念碑であることは繰り返すまでもなかろう。有島の代表作としての『或る女』は、多くの優れた作家の代表作に共通する一つの性格を持っている。それは、この作品が、それ自身としての価値より、彼の厖大な著作に冠せられた序文として貴重なのである。『或る女』は彼の文学的才能の、無意識であるがゆえに正確な見積書と言ってもよい。その後、彼が書いた戯曲にしても、小説に

5、しても、全体的に代表作『或る女』にあらわれた面影は変っていないと世が認める。本研究は、『或る女』を通して、登場する葉子の愛と死から見た有島文学における孤独美を研究し、さらに、有島の内面を解読し、その創作特徴を分析してみたい。第一章　有島武郎について　有島武郎は明治十一年三月四日、東京の小石川水道町五十二番地に、当時、大蔵省の権少書記官をしていた有島武の長男として生まれた。父武は晩婚で、三十七歳で、母幸子二十五歳との間に、はじめてできた長男であったが、やがてこの夫婦の間には、武郎を頭に、五男二女が生まれ、七人の子供たちとなった。有島武郎は自分自身については、「私自身の性格から言えば、も

6、とより南方の血を認めないわけにはいかないが、わりに北方の血を濃く承けていると思う（中略）私の家のような家に長男に生まれた私だから、自分の志す道も飛躍的にいれず、かう遅れたのであらうと思う。」安川定男『近代日本の文豪·有島武郎』読売新聞社.1968　と述べている。従って、人前でおびえがちであった性情が境地の静寂を願った。十歳で学習院予備科に入学し、十九歳で学習院中等全科を卒業した。その後、札幌農学校に入学した。内村鑑三や森本厚吉の影響などもあり、1901年にキリスト教に入信した。農業学校卒業後に軍隊生活を送り、その後、渡米し、ハバフォード大学11大学院、さらにハーバード大学で学び、社会

7、主義に傾倒し、ホイットマンやイプセンらの西欧文学、ベルクソン、ニーチュなどの西洋哲学の影響を受ける。さらにヨーロッパにも渡り、1907年帰国した。このころ信仰への疑問を持ち、キリスト教から離れる。帰国後は再び予備見習士官や大学の英語講師として過ごしていたが、弟の生馬を通じて志賀直哉、武者小路実篤らと出会い、同人誌『白樺』に参加する。『かんかん虫』『お末の死』などを発表し、白樺派の中心人物の一人として小説や評論で活躍した。1916年に妻と父を亡くした後、本格